海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
いまいましそうに吐き捨てる爺さんは、先ほどまでの弱々しい態度とは対極の、太々しさだった。
アーサーさんが気づいて止めていなかったら、あの兵士はどうなっていたか……。
考えれば、今さらながら震えが走った。同時に、アーサーさんの判断力と洞察力に感服した。 毒の情報を受けて、兵士らは皮手袋を装着して、慎重に鉤爪の武器をはずしていく。
その間にアーサーさんは、爺さんの右腕をねじ上げるのと逆の手を、爺さんの着衣の下に突っ込んだ。
……え? 嘘、だろう!?
目の前の光景は、にわかには信じがたいものだった。
アーサーさんの手が爺さんの着衣の下から引き出されるたびに、暗器が続々と積み上がっていく。
なんと、爺さんが隠し持っていたのは鉤爪だけじゃなかった。小型のナイフから、ワイヤー形の見慣れない武器もあれば、ブーメランのような飛び道具もある。
怪しげな液体が入った小瓶は、もしかしなくとも毒物だろう。
爺さんからは、ありとあらゆる武器が続々と押収された。
……なにが丸腰なモンか!! 丸腰どころか、この爺さんはとんだ食わせ者だ!
そうしてアーサーさんは、最後に爺さんの首に下がる革紐を取り上げた。