海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
……な、なんということだ!
ローシャル伯父上は才覚にあふれながら、なんと初歩的な、かつ特大のポカをさらしたのか!
「祖父ちゃん、ドジだなぁ」
エレンがポツリと漏らした一言は、間違いなく全員の心の代弁だ。
ローシャル伯父上が犯罪の一端を担ったことは事実。けれど俺は、ローシャル伯父上の人柄が、どこか憎めないと感じた。
「エレン、聴取が優先にはなるが、空いた時間に顔を見せに行ってやるといい」
「え!? いいの!?」
「ああ、お祖父様にヘレネ様の話を聞かせてやるといい」
「うんっ!」
俺はあえて口には出さなかったが、バーミンガー王国に着いた後、陛下にも同じように祖父と孫娘の時間を持たせてさしあげられないかと考えていた。
エレンと対面すれば、陛下がどんなにか喜ばれるだろう。出航前夜の陛下の涙が思い出された。