海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 父ちゃんが満面の笑みでうなずいて、大きな手でわしゃわしゃと頭をなでる。
 私はちゃっかりと言質を取ったことで、内心でニンマリと笑い、父ちゃんの手に甘えるように頭をすり寄せた。
「わかった! じゃあ、寂しいけど、父ちゃんと入るのは今日で最後にする!」
 笑顔で告げれば、父ちゃんも微笑んで返した。
 だけど、正面に向き直った父ちゃんは、でっかい背中を小さく丸めて肩を落とした。しかも背中はたまに、不自然に小さく揺れる。
 流しやすいっちゃ、流しやすいけど……。
「なぁ父ちゃん、そんなに背中丸めてくんなくても、私、ちゃんと襟足まで流せるよ?」
「あ、あぁ……」
 タオルでゴシゴシと父ちゃんの首回りをこすりながら水を向ければ、父ちゃんは鼻声で返事をし、のそのそと緩慢に背中を起こした。
 なんだ? とにもかくにも、今日が最後と思えば、背中を流す手にも自然と力がこもった。
 流し終わった時、父ちゃんの背中はちょっと、赤くなっていた。
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