海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
ちゃぽん。ぶくぶくぶくぶく……。
空気をためたタオルをお湯に沈めれば、小気味よくあぶくが上がる。
「ねぇ父ちゃん、さっきの話は?」
「うん?」
私は湯船に父ちゃんと並んで浸かり、タオルで風船遊びをしながら問いかけた。
「父ちゃんと祖父ちゃんが昔、祖母ちゃんに商売押しつけてふたりで外国を回ってたって、鍛冶屋のおじちゃんが言ってたよ。父ちゃんは海の先にも行った?」
あっ! 父ちゃんが作りかけていた特大のタオル風船から、ボフンと空気が抜けた!
「……あのおしゃべりめ」
父ちゃんが何事かつぶやくが、私はそれよりも、過去最大のタオル風船がしぼんでしまったことが残念でならなかった。
結局タオルはそのまま父ちゃんの手を離れ、湯船の底に沈んだ。同時に私のタオル風船への興味もしぼんだ。
「そうだな。亡くなった俺の父とふたりで外国を回っていた時期もある。海を渡った違う大陸の諸国を回ったこともあった。だが、それももうずいぶんと昔の話だ」
「違う大陸!? そんなのあるの!?」