海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 そのまま見ていても一向に転がってくる気配がないので、私は扉側に回り込むと、再びエイッとミノムシアーサーさんを押してやった。
 アーサーさんはうまいこと、敷布の上に転がった。
「よしっ、これでいいな」
 ジャガイモが寝台を占拠して、船長が床でミノムシでいいわけがないからな!
 それに濁った眼鏡を取り払って冷静に考えてみれば、なんのこっちゃない。少年を語る私が過剰に意識する方がよっぽどおかしいと気がついた。
 アーサーさんと眠るのは、父ちゃんと眠るようなもんだ!
「ほんじゃ、今度こそおやすみ!」
 すっかり納得尽くで、私は敷布の寝台側に寄り、コロンと小さく寝転がる。そうして、うんしょと寝台から上掛けを引っ張り落とせば、上掛けはいい感じで体の上に降ってきた。ちょうど半分ほどは、ミノムシアーサーさんの上にかかる、絶妙な具合だった。
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