海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「……お前さ、何者なわけ? この船にはさ、若手だって全員事前訓練を積んだ精鋭しか乗ってない。お前みたいな奴、訓練にはいなかった。どんな使命を持っての乗船かと思えばお前、てんで武術にも通じてない。それって、どんなコネで乗ってきたんだよ? ボンボン息子の道楽か!?」
 事前訓練? 武術? 少年の言葉はよく、わからなかった。
 なにより、どうしてこんなに少年が激昂しているのか、まるでわからなかった。少年の勢いに、私は理不尽を憤るよりも、気圧されてしまっていた。
「な、なんだよ。この船に乗るのってそんなに大変なのかよ? 乗船料払えば乗れるんじゃないのかよ?」
 少年の目に、カッと怒りの炎が燃えた。
 また暴力を振るわれるのではないかと、思わず身構えた。けれど再び手足が出てくることはなかった。
「あたり前だ! ボンボンは金さえ払えばどうとでもなると思ってる。しかも身に迫った、さしたる理由もないのに、我を押し通す傲慢さにはへどが出る!」
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