海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
それはまったくの初耳だった。
「なんだ? 俺の小姓になりたい者など、あったのか?」
そもそも長たる俺が、末端の人事希望など知る由もない。
「ええ、乗組員はあなたのその本性を知りません。合同訓練などの折に見る、あなたの禁欲的で厳しい姿に、すっかり騙されていますから。しかも方々から注がれる憧憬の眼差しを歯牙にもかけないあなたの姿は、勝手に孤高と変換されています」
「なんだマーリン!? 妙に持ち上げてくれるではないか! どうした、熱でもあるのか?」
俺はマーリンの口から紡がれる美辞麗句に、内心でものすごく照れていた!
「……もういいです。精々トラブルの芽を未然に摘み取るのに尽力してください?」
「任せておけ! さて、俺は早速人事異動通知書を掲示してくるとするか」
俺は揚々と立ち上がり、人事異動通知書を手に扉に向かった。
「船長」
「うん?」
まだなにかあるのか? 面倒くさい奴だな。