海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
俺は若干億劫に思いながら、マーリンを振り返る。
「誤字ありますよ、ソレ? 教えてあげようと思ったんですけど、船長の顔に面倒くさいって書いてあるので、やっぱり言うのやめます」
なんだと!?
言うだけ言うとマーリンは、ツカツカと俺の横を通り過ぎ、颯爽と扉の外に消えた。
――キィィ、パタン。
扉が閉まる音でハッと気づいたときには、俺と誤字ありの人事異動通知書が虚しく室内に取り残されていた。
机に戻った俺は、目を皿にして誤字探しに没頭した。誤字の修正が終わり、掲示が済んだのは日暮れ近くだった。
ふふん、これで一安心というものだ。
「海風でも浴びて戻るとするか。書面仕事というのは肩が凝っていかんからな」
人事異動通知書を船内掲示板の中央に貼り終えた俺は、足取り軽く上甲板に続く階段を上り始めた。
上甲板が近づくと、ガヤガヤとしたざわめきが耳に届く。
……なんだ? ずいぶんと賑やかだな。