海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
そう告げるのが、やっとだった。
俺はせめてもと思い、ズボンのポケットから手持ちのハンカチを引っ張りだした。広げたハンカチは、頭からかぶらせようとすれば少々心もとないサイズだった。
仕方なく広げ、首裏を覆うようにして結びつけた。
ほんの慰めにすぎないだろう。けれどいくらかでも、エレンを厳しい太陽から守ってくれと、祈るような思いだった。
「ありがとうアーサーさん!」
エレンは力強くうなずいて答えると、またもくもくと甲板を磨き始めた。
それを横目に、俺は一目散に上甲板から駆け下りた。
階段を下りながら、俺の胸にはエレンに対して今までにない思いが湧き上がっていた。これまでエレンに対しては、圧倒的な庇護欲が勝っていた。
俺の目にエレンはただただ可愛くて、俺の腕の中に閉じこめて、一から十まで全部を俺の手で世話してやりたくて堪らなかった。