海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
ドキドキの手当て



 やっと甲板磨きを終えて目線を巡らせれば、先の言葉通りアーサーさんが甲板端で私を待っていた。
「アーサーさん、終わったよ。お待た、っ!」
 重い腰を上げ、アーサーさんに向かって足を踏み出す。けれど一歩目で、私は疾風のごとく駆け寄ってきたアーサーさんにさらわれた。
「わっ? わぁああっ!?」
 私はそのままアーサーさんの腕に抱かれ、船内を目にも留まらぬ速さで駆け抜けていた。
「なぁ、アーサーさん? 俺、歩けるぞ?」
 私がアーサーさんに抱えられたのは、初めてじゃない。この船へも、自分の足じゃなく、アーサーさんに抱えられて乗船した。
 だけどその抱え方が、今と前の時とではまるで違う。前はお世辞にも丁寧とは言いがたい、小麦袋みたいなぞんざいな扱いだった。それがいいってわけじゃないけど、こんなふうに背中と膝裏に手を添えて横抱きにされるのは、ものすごくこそばゆい。
「なぁってば?」
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