海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 返ったのは至極まっとうすぎる答え。私は奪われたシャツに向かって伸ばしかけた手を、すごすごと引いた。アーサーさんにポイッと放られたシャツが、寝台下にへチャッと落ちた。
アーサーさんは無言のまま、赤く炎症した患部に冷却の処置をし始めた。症状のひどい頭部から頸部、首回りへと黙々と手当てを施す。
 その様子はまさに真剣そのもので、邪な考えなどわずかにだって介在する余地がない。
 そうなってくれば、シャツの件でちょこっと疑ってしまったことに、猛烈な自己嫌悪が湧き上がる。
私ってば、シャツを脱がされたくらいでなに過剰反応してんだよ!?
 そもそもだぞ? ジャガイモ坊主が、アンダーシャツ姿に恥ずかしがる方がおかしいだろ!?
 なによりアンダーシャツの下は、さらしを巻いた鶏ガラだしな! ……いや、考えようによっちゃ、それもちょっと侘しいな!
「うぷっっ」
「エレン、あてた冷却のガーゼが落ちてしまうから、百面相はそこまでだ」
 ……う、うわぁ! これ、気持ちいいなぁ!
< 70 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop