海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
顔面を覆う、冷やりとした感触が心地よかった。この気持ちいいのを落っことして、フイにしてしまうのは本意じゃない。
私は小さくうなずくことで同意を示した。
甲板を一日中磨き続けたのはもちろんのこと、日焼けというのは存外体力を消耗するらしい。
あてられたガーゼが、視界に紗幕をかける。真っ暗ではないけれど、優しく光が遮られれば、ぎらつく太陽に疲れた体が自然に綻ぶ。
それにしたってアーサーさんは親切すぎるくらいで、手際よく革靴まで脱がせてくれる。いや~、船長に靴まで脱がせてもらっちゃうなんて申し訳ない。ほんっと、甲斐甲斐しいやなぁ~。
小さい頃はさ、こんなふうに父ちゃんにもよく、脱がせてもらったもんだよ。あれ、だけど最近じゃさすがに脱がせてもらうなんてしないぞ……?
……アーサーさん、よっぽどだな!
とまぁ、そんな調子で私はここまで、わりとのんきにアーサーさんに身を任せていた。
「うおっ!?」