海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
だけどホッとしたのも束の間で、今度は反対側の足が取られてる!?
や、やばい!! また同じことされたら、こんどこそ息が止まっちゃうんじゃないか!?
日焼けじゃ死なないが、羞恥では死ねるぞ!?
「……よし、これでいいだろう」
不毛な現実逃避に意識を飛ばしていれば、アーサーさんの声がかかった。
処置が終わった左足も、ゆっくりと解放された。
私はひとり、肩をなで下ろした。
「エレン、今日は消耗が激しいはずだから、このままここで安静にしているんだ」
え? ここで? ……それはなにか、おかしくないか?
「おっと、反論は受け付けない。これは船長命令だ。冷却が済んだ頃に、軟膏を塗りにくる」
アーサーさんの大きな手が、日焼け箇所をよけ、背中をポンポンとなでる。そうしてアーサーさんは治療に使った残りのガーゼやたらいを机の上に置くと、颯爽と扉に向かった。
「そうだエレン! 水分はきちんと取るんだぞ。枕元の水袋はエレンのだから遠慮せずに飲め、ではな」
扉から出がけに、アーサーさんが思いだしたように告げる。