海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 顔にかかったガーゼをずらし、逸る心のまま手にした水袋をあおる。
 ゴクゴクと喉を鳴らして水を飲む。
「……うまい」
 飲んだのはただの水だ。だけどただの水をこんなにもおいしいと思ったことは、初めてだった。
 比喩でなく、臓腑に染み渡るとはこのことを言うのかと、しみじみと感じ入った。
 手の中の水袋は、一息で半分ほどかさを減らしていた。
 ふた口目で水袋の中身は、三分の一を残すだけになった。
 私は満たされた思いで、手当ての箇所に触らぬよう、慎重に寝台に横たわった。


 ――コンッ、コンッ。
 ……ん?
 ――コンッ、コンッ!
 連続するノックの音が、私を眠りの世界から、現実に引き戻す。
 誰かが扉をノックしていた。
「はいっ!」
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