海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
私は慌てて顔の上のガーゼを取って、扉の外に向かって声を張る。同時に寝台からも跳び起きて、居住まいを正す。
アーサーさんは、ノックはするが、それに対する反応を待たずに扉を開ける。そもそもここはアーサーさんの部屋だ。入室の可否を問うという感覚を、アーサーさんは最初から持ち合わせていないようだった。アーサーさんにとって、ノックは単に、入室を報せる合図にすぎない。
だから訪問者がアーサーさん以外の誰かというのは明白だった。
「失礼してよろしいでしょうか?」
扉の外の誰かは、私から入室の許しがかかるのを待っている。
「どうぞ!」
私の声を受けて、扉はゆっくりと開かれた。
「お、お前……!」
扉から現れたのは、私にとってかなり予想外の人物だった。そいつは室内をぐるりと見回すと、
「なんだよ、お前ひとりか。丁寧な態度を取って、損をした」
聞き捨てならない台詞をのたまった!