海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
別に私は、これっぽっちもとぼけちゃいない。
ってか、その恐ろしい物でも見る目はなんだよ?
「なぁトレッド、なんか勘違いしてるよ。とにかく寝台に関してはアーサーさ……船長が、半ば脅すようにして使えって言って聞かなかったんだよ。俺が大部屋で寝ようとすれば、アーサー船長は代わりに自分が大部屋に行くって聞かないし。だったら俺は床でって思ったって、アーサー船長が先に毛布に包まって床を占拠しちゃうしさ、こっちも仕方ないんだよ」
トレッドが半分口を開けた状態でポカンと私を見つめていた。その口は、たまにパクパクと動くのだけど、別段音は紡がない。
「ってかさ、アーサー船長って甲斐甲斐しすぎだよな。晩飯の配膳もすりゃ、直々に手当てだってする。船長ってーのは、ほんとマメじゃないと務まんないんだなぁ」
「……嘘だろ。船長は厳しい方だ。どんなに体調が悪かろうが、食堂への集合に一分遅れようものなら、飯なんざ食わんでいいと無下に言い放つ。訓練中に怪我をしようものなら、注意力散漫だと活を入れられる。付き添いなんてつけちゃくれないから、皆這って医務室に向かう」