海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
……なるほど。これは理にかなっているな。
納得した私は、私物の荷物をトレッドに手渡した。
「エレン様、身の回りの品もすべて検査対象です。もしポケットの中身やアクセサリー、身につけている物があれば、すべて出していただきますよう、お願いいたします」
……えーっと。
逡巡の後、私は首から革袋のペンダントを引っ張りだして手渡した。
「これで全部だ。疑うなら、調べてもらってかまわないよ」
こういうのはごまかしとか、そういうのが一番よくないからな。
私は両手を上げて、トレッドの前に立った。
「いえ。俺はエレン様を信じます。これだけお預かりいたします。荷物は検査が済み次第、すぐに返却いたします」
トレッドは苦笑して、小さく首を横に振った。
「それではエレン様、失礼いたしました」
「あいよ~」
そうして今度こそ、トレッドは船長室を後にした。
いまだ言葉使いがとんちんかんなままのトレッドを見送った私は、別段することもないので、普段は祈らない神に、トレッドの脳みそが自然治癒するように祈りを捧げた。