海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 おそらく聞き間違で間違いないが、俺の耳は「ジャガイモ坊主が身のほどを知れ」と、謎の台詞を拾った。
 とにもかくにも、エレンの語る一言一句、一挙手一投足、すべてが狂おしいほどに可愛らしい。
「んー、そうだなアーサーさん! たしかに俺がひとりで寝台よりかはいいな! よし、そうする!」
 ガバッと顔を上げたエレンが、ニカッと晴れやかに笑う。
 その無邪気な笑みに、切ないほどの恋情が募る。
 もたらされたエレンの答えもまた、俺を有頂天にさせる。
 そうこうしているうちに、エレンが動きだした。昨夜と同様に、エレンがえっちらほっちらと、敷布を床に落として即席の寝床を作る。
 俺は、そんな無邪気な姿を見つめながら思う。
 エレンとは海神が遣わした精霊なのではないだろうか? キラキラとまばゆく輝くエレンから、目が逸らせない。誰もをひきつけてやまない美貌の精霊が、苦しいほどに俺を魅了する。
 俺はまばゆい精霊への恋に囚われて、もう逃れられない。逃げる気だって、さらさらない。
「あ、アーサーさん、そっち引っ張ってよ?」
「ん、こうか?」
「うん!」
 ……俺に向かってエレンが笑う。
 それだけで、俺の心は歓喜に震えた。
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