海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
アーサーさんの登場で配膳の行列は、あきらかに割れた!
けれどアーサーさんは、いたって平静そのもので、涼しい横顔をさらしてる。
「お! エレン、あちらのテーブルが空いているようだな。あそこで俺たちも晩飯にしよう」
「……いや、今のはどう考えたって空いていたんじゃなくて、アーサーさんの姿を見て席を空けたよな?」
「そうだったか? なに、ちょうどよく食い終えただけだろう」
アーサーさんは小首をかしげ、笑顔で空いたテーブル席に腰を下ろした。私も隣に腰を下ろす。
アーサーさんは着席するや否や、トレーから一皿を取り上げると、無我夢中で硬そうな燻製肉をナイフとフォークでザシュザシュとほぐし始める。
それを横目に、おそるおそる周囲へと視線をやれば、乗組員たちがギュウギュウとひしめき合って食事をしている。その傍らで、私たちが座る六人掛けのテーブルだけが、ゆったりとふたり専用って、……あり得ないだろぉ。