愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
俺は食べる側だから出されればなんでも食べるけど、作る側にとって“なんでもいい”は一番難しいのだろう。

昨日の晩は鶏の唐揚げで、その前はハッシュドビーフだった。

肉料理が続いたので今日は魚にしてもらおうかと考える。

「……じゃあ和食で。魚料理が食べたいです」

俺が答えると、宮本さんは大きくうなずいて満面の笑みを浮かべた。

「わかりました!私、こう見えて和食は得意なんですよ!」

“こう見えて”とは、若い女性は洋食が得意と思われがちだけど、ということだろうか。

家政婦なら和食でも洋食でも、家庭料理は一通りできて当たり前なのでは?

そう思いながらも深くは追及せず、「楽しみにしてます」とだけ答えた。

俺が食事をしている間、宮本さんは使った調理器具を洗ったり米を研いだりしながら、キッチンから俺に話しかけた。

それは家政婦が聞きそうな好きな食べ物とかではなく、学校や部活のことだった。

「何か部活はやってるんですか?」

「もう引退しましたけど、バレー部でキャプテンやってました」

「キャプテンですか!間違いなくモテるでしょう?彼女はいるんですか?」

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