愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
おしゃべりが好きな土田さんでさえ尋ねなかったことを、宮本さんはなんのためらいもなく尋ねた。

やっぱりこの人は家政婦という感じがしない。

「モテるっていうほどでもないけど、彼女は一応……」

「いいですねぇ……青春って感じで!」

青春なんてオーバーな。

彼女と認識している女子、吉野 茉央が一応いるにはいるけど、ただ“好きだから付き合って欲しい”と言われたからそれに応じただけで、吉野のことが好きかと聞かれたら、それほどでもないような気がする。

彼女のいる男友達のように、突然無性に吉野に会いたくなったりはしないし、抱きしめたいとか触りたいという欲求もない。

高校生でも恋人同士ならキスくらいは当たり前にしているようだけど、吉野とはキスどころか手を繋ぎたいとも思わないから、ただ一緒に下校するとか、たまに一緒に出掛けたりする程度で、彼女と言っても仲のいい女友達と大差はない。

ただお互いが“付き合っている”と認識しているかどうかだけの差だと思う。

それでも吉野と付き合っているのは、俺のことが好きだと言ってくれるからだ。

俺のどこが好きとか、なぜ好きなのかはわからないけれど、好きだと言ってもらえるだけで安心する自分がいて、逆に「私のこと好き?」と尋ねられたら、たいして好きでもないのに「うん」と答える。

吉野自身を好きではなくても、俺を好きだと言ってくれるところは好きだと思う。

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