愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「やっぱり若いっていいなぁ、うらやましい……。私なんか高校卒業したのはもう何年前だっけ?って感じで……」

宮本さんは夢見る乙女のような目をして、そんなことを呟いている。

「いやいや……宮本さんもじゅうぶん若いでしょう?」

「私なんか来月で24ですよ!高校卒業して短大に行って就職した会社は入社して1年でいきなり倒産しちゃうし……短大が家政科だったので家政婦を始めたんですけどね、バリバリのベテラン主婦にはかなわないから、2年経って後輩ができても一番下っ端みたいな感じで……」

歳のわりには苦労しているらしい。

そしていつまでも一人前扱いされないことに、かなり鬱憤が溜まっているようだ。

「実際に若いんだからしょうがないんじゃないですか?だって宮本さんは他の家政婦さんの娘さんくらいの歳でしょう。どうしても娘を見るような感覚になってしまうんでしょうね。それでもうちを一人で任せられてるんだから、仕事ぶりは認められてると思います」

客観的な意見を述べると、宮本さんはポカンとした顔で俺の方を見た。

何か気に障ることでも言ってしまっただろうか。

6つも歳下の高校生にそんなことを言われても、余計に腹が立つと思っているのかも知れない。

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