愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
歳上の女性(ひと)
翌日からも宮本さんは平日の午前11時頃にやって来た。

この家の勝手がわからないうちは作業に時間がかかって大変そうだったけれど、数日も経つと慣れてきたようでだんだん手際が良くなり、家事の合間に雑談をするくらいの余裕が出てきた。

1週間もすると他愛ないことを笑って話せるようになり、最初の頃に感じた戸惑いはなくなった。

俺がリビングで勉強していると宮本さんはアイスコーヒーを入れてくれたり、うちに来る途中でアイスクリームを買ってきてくれたりもした。

慣れてもやはり家政婦っぽくはなく、一人っ子でいとこの中で一番歳上の俺は、もし姉とかいとこのお姉さんがいたらこんな感じなのかなと思ったり、宮本さんが来ると家の中が明るくなるような気がして、いつの間にか宮本さんが来るのが楽しみになっていた。


半月も経つとお互いにすっかり打ち解け、自然と敬語で話すのをやめて“潤くん”“英梨さん”と呼び合うようになった。

「潤くん、夏休みなのに友達とか彼女と一緒に遊びに行ったりはしないの?」

英梨さんは昼食の準備をしながら、リビングで勉強の合間の休憩をしていた俺に話し掛けた。

「一応受験生だからね、勉強しないと」

英梨さんの入れてくれたアイスコーヒーを飲みながら、ごく当たり前の返事をすると、英梨さんはつまらなさそうに少し口を尖らせた。

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