愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「なんだなんだ、年寄りくさいなぁ。それは若者の言う台詞じゃないよ」

「ジジ臭くて悪かったね。ジジイは受験が済んだら一人で温泉にでも浸かりに行くよ」

「ジジ臭いとまでは言ってないけど、その年頃の男の子にしては珍しいよね、潤くんって。いい意味で落ち着いてるし、全然ガツガツしてない」

それは男としての魅力に欠けるとか、男の本能を忘れてるとか、そういうことだろうか。

だけど吉野だけでなく他の女子に対しても、性的な衝動や欲求は湧かないのだからしょうがない。

「同級生の友達は彼女としょっちゅう会ってイチャついてるらしいけど、今は何かあっても自分で責任取れないから、俺はそういうのはまだいい」

「真面目なんだ」

英梨さんのその言葉は、俺にとって誉め言葉には聞こえなかった。

つまらない、なんの面白味もない男。

もしくは“まだまだガキね”と言われたような気がしてムッとする。

「面白味がない男だって言いたいの?」

「そうじゃなくて。潤くんのそういうちゃんとしたところがいいなぁって思ったの。潤くんは潤くんだもんね、それでいいと思うよ。でもさ……自分の置かれてる状況とか全部忘れて、何もかも失ってもいいって思えるくらいの恋をしてみたいとか、思わない?」

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