愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「別に聞きたくないし……それにそんなこと他人に話すなよ。石田が気の毒だろ?おまえに抱かれて石田がどんな風になってたとか、他の男に想像されてもおまえはいいのか?」

語気を強めてそう言うと、太一は少し考えるそぶりを見せた。

「あー、そうか……それは全然良くないな。潤、ヒナの裸とか想像するなよ」

「するわけないだろ、興味ないし。でもまぁ……何をどうしてこうなったとかは聞きたくないけど、太一の感想くらいは聞いてやる」

「そりゃもう……めちゃくちゃ幸せだった。ずっとヒナのこと大事にしようって思った」

太一は幸せそうな笑みを浮かべて呟いた。

少なくとも太一は、気持ちよければ誰でもいいと思って彼女を抱いたわけではなさそうだ。

「なら良かったじゃん、今まで以上に大事にしてやれよ」

本気で好きになった相手とならば、生殖目的でない意味のない生殖行為も幸せだと感じるらしい。

俺には経験のないことだから、太一の感じている幸せがどんなものなのかはわからないけれど、本人たちが良ければそれでいいと思う。

話も済んだことだし今度こそ勉強に取りかかろうとすると、太一は鞄の中を探り始めた。

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