愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「学校の友達が来ててこれから一緒に勉強するけど、気にしなくていいよ」

その友達とさっきまであんな話をしていたとは言えない。

大人の英梨さんにとっては高校生の俺たちの性体験の話なんて、ガキの戯言にしか過ぎないだろう。

なぜだかわからないけど、俺は英梨さんにはガキ扱いをされたくはないから、さっきの会話を英梨さんに聞かれなくて良かったとホッと胸を撫で下ろした。

「お昼は二人分用意した方がいい?」

「ああ、そうだなぁ……。じゃあお願いしようかな」

そんな会話をしながら英梨さんと一緒にリビングに戻ると、太一は目を大きく見開き不思議そうな顔をしていた。

「こんにちは」

「こんにちは……。おじゃましてます……」

英梨さんに笑いかけられ、太一はかしこまって頭を下げる。

そして英梨さんがいつものように洗濯をするため脱衣所に向かうと、元の場所に座った俺の肩をつかんだ。

「……誰?」

「ああ……太一は英梨さんと初めて会うんだったな」

太一は土田さんを知っているから、英梨さんは臨時で来ている家政婦さんだと説明しようとすると、太一がくそ真面目な顔をして俺の耳元に顔を寄せた。

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