愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「言いたいことがあるなら直接言ってくれないと、俺には吉野の考えてることなんかなんにもわからないよ」

「思ってても相手に直接言いにくいことってあるだろ?吉野は潤が好きだから、いろいろ悩んでるんだ」

「いろいろ?いろいろってなんだよ」

「いろいろはいろいろだよ」

雑にまとめられたら余計にその意味がわからないけれど、これは俺と吉野の問題だ。

太一のお節介にうんざりして大きなため息をつく。

「俺、明後日模試だしもう勉強したいんだけど。おまえはまだ夏休みの課題残ってるんだろ?勉強しないなら帰れよ」

「……やるよ」

太一はしぶしぶと言った様子で問題集を広げた。

それからは二人とも黙々と勉強をした。

恋愛も数式と同じように明確な答を出せたら、迷うことも悩むこともないんだろうなと思った。



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