愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
俺がリビングに戻ると、吉野は仏頂面で消しゴムを握りノートに書いた文字を消していた。

「三島くん、家政婦さんにも優しいんだね」

「そうか?普通だろ?」

「あんまり誰にでも優しすぎると、相手は自分に気があるんじゃないかって勘違いしちゃうかもよ」

高いところにあった皿を取ってあげたくらいで、ずいぶん大袈裟じゃないか?

吉野は英梨さんと俺が普通に話しているだけでも面白くないらしい。

「それはないよ。吉野は心配性なんだな」

「しょうがないじゃない……。三島くんのことが好きだから心配になるの」

好きだと言われるとホッとする。

なんとなく心が満たされるような気がして、もっと言って欲しくて、俺はその安心感を失わないように吉野の頭を優しく撫でた。

そんなことをしたのは初めてだったので、吉野は少し驚いた顔をした。

「大丈夫だから、そんなに心配しなくていいよ」

「うん……あんまり仲が良さそうだから、ちょっと妬けちゃった。ごめんね」

こんな些細なことでヤキモチを焼くということは、吉野はきっと俺のことが好きで好きでしょうがないんだ。

そう思うと単純に嬉しかった。


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