愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「俺はそういうことするつもりで吉野を部屋に連れて来たんじゃないよ。吉野が二人でゆっくり話したいって言うから連れて来ただけ。俺、明日模試だから、話すことないならリビングに戻って勉強したいんだけど」

自分の手から吉野の手をほどきながらそう言うと、吉野はうつむいたまま唇を噛んだ。

「私のこと好きじゃないの?」

「そういう問題じゃなくて、今はただ余計なことは考えたくないだけ」

好きじゃないのかという問い掛けには答えず、正直な気持ちを伝えた。

すると吉野は一瞬顔を上げて目を見開き、その大きく開いた目を潤ませる。

「三島くん、私には全然優しくない。三島くんにとって私とのことは余計なことなんだ……」

なんだか話がややこしくなってきた。

俺は受験前の大事なときに快楽に溺れて我を忘れるようなことはしたくないだけなのに、どうしてわかってくれないんだろう?

むしろこんなくだらない押し問答に時間を割く方が余計なことのような気までしてくる。

「俺は大事にしてるつもりなんだけど、それだけじゃ吉野は満足できないんだな。吉野がそんなにしたいならしてもいいけど、後先考えずにやって妊娠なんかしても、俺はまだ高校生だし大学にも行きたいから、なんの責任も持てないよ。それでもいいのか?」

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