愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
彼女の素顔
翌日は模試を受けるために自宅の最寄り駅から3駅先にある公立高校に足を運んだ。

会場内はそれぞれの学校の制服に身を包んだ他校の生徒たちで溢れかえっている。

俺と同じ学校の生徒は内部進学する者が多いせいか、その姿はほとんど見かけない。

受付を済ませて指定された席に着き、筆記用具を出そうと鞄の中をあさっていると、底の方に入れた覚えのない小さな箱が入っていることに気付いた。

いやな予感がして、おそるおそる鞄の中を覗いてみると、それは案の定、俺が太一に突き返したはずの避妊具だった。

わけのわからない状況にうろたえ、手のひらにじわりと汗がにじむ。

俺は急いで必要なものだけを取り出して鞄のファスナーをしめた。

なんでこんなものがここに入っているんだろう?

俺は確かに要らないと言って太一に返したはずなのに。

そう思いながら太一が来た日のことを思い返して、これがここにある理由に気付く。

俺はあのとき、こんなものは必要ないと言って太一に返したあと、英梨さんが来て玄関に出た。

きっとその間に太一が俺には内緒でそっと鞄の中に忍び込ませていたのだろう。

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