愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「その荷物重そうだね。俺持つよ」

「大丈夫。それにこれは私の仕事だから」

「いいから貸して。俺が食うんだから運ぶくらいするよ」

強引に買い物袋を取り上げると、英梨さんは少し驚いた顔をしたあと、クスッと小さく笑った。

「ありがとう。じゃあお願いしようかな」

並んで歩き出そうとしたとき、英梨さんはスーパーのすぐそばにあるアイスクリームショップを指さした。

「ねぇ潤くん、アイスでも食べて帰らない?」

「アイスかぁ。いいね、行こう」

「よし、今日はお姉さんがおごってあげる。暑い中出かけて模試を頑張った潤くんにご褒美ね」

受験生の俺を労ってくれる気持ちは嬉しいけど、英梨さんのその言葉はものすごく子ども扱いをされているようで、複雑な気持ちになった。

「……俺のこと子ども扱いしてる?」

「してないけど、潤くんより私の方が6つも歳上だから、お姉さんでしょ?おばさんにはまだ早いかなと思うし」

「それはそうなんだけど……」

たとえ歳の差が2つや3つであったとしても、大人の英梨さんにとっては、高校生の俺なんか子どもなんだろう。

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