愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
昨日吉野を拒んだときには、なんの責任も取れない子どもだと自分で認めていたくせに、歳上の英梨さんに子ども扱いされるのがいやだなんて、矛盾していると思う。

そもそも、『子ども』と『大人』の境界線がどこにあるのかがわからない。

年齢なのか、社会的な地位なのか、それとももっと精神的なものなのか。

大人の男になるには何が必要で、あと何年くらいしたら誰もが俺を大人だと認めてくれるんだろう?

「早く大人になりたいなぁ……」

思わずそう呟くと、英梨さんは意外そうな顔で俺の方を見た。

「そのうちいやでも大人にならなきゃいけないんだから、焦らなくてもいいんじゃない?今はまだ、大人じゃない今しかできないことを楽しんだ方がいいと思うよ」

「そんなものかなぁ……」

「そうだよ。甘えられるうちに甘えて、やりたいことやって、それから大人になればいいの。そうしないと大人になってから、あのときもっとこうしておけば良かったなって後悔するから」

英梨さんはやけに実感のこもった口調でそう言った。

英梨さんにもそんな経験があるんだろうか。

俺もいつか大人になったら、今の英梨さんの気持ちがわかるようになるのかな。

「だから今日は素直におごられてね」

そう言って英梨さんは、笑いながら俺の背中を軽く叩く。

その笑顔に少しホッとして、俺も少し笑った。

「うん、わかった。ゴチになります」

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