愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
俺たちはどちらからともなく引き寄せられるように唇を重ね、抱きしめ合って何度もキスをした。

キスなんて初めてだったけど、誰に教えられたわけでもないのに、英梨さんの唇を舌でこじ開けあたたかく湿った舌を絡めとる。

英梨さんの唇や舌の柔らかさ、抱きしめた体のあたたかさを感じるごとに、俺はそれだけでは足りないような、もっと深く繋がりたいようなもどかしい気持ちになった。

そしていつの間にか俺は英梨さんをベッドの上に押し倒し、英梨さんの着ていたTシャツをたくし上げて素肌に触れていた。

これまでは好きでもない相手に手を出すなんてあり得ないと頑なに思っていたはずなのに、そのときの俺は不思議なことに、英梨さんの気持ちだけでなく体も繋ぎ止めたいと思っていた。

俺の手や唇が柔らかい場所に触れると、英梨さんは切なそうに甘い声をあげる。

そして俺の名前を呼んで、何度も好きだと言ってくれた。

もっともっと好きだと言って俺を求めて欲しくて、俺は無我夢中で英梨さんの肌に舌を這わせ、体の奥の柔らかいところを指でさぐる。

そして俺は鞄の中から取り出した太一の置き土産を使って、英梨さんと体を繋げた。

初めてのセックスが気持ち良かったかどうかなんて覚えていない。

英梨さんが俺のすべてを求め、受け入れてくれたことが、ただひたすら嬉しかった。


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