愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
それでも俺は志織をあきらめきれず、“部署は変わっても気にかけてくれるいい先輩”を演じ続けているうちに、俺は課長に、志織は商品管理部生産管理課の主任に昇進した。

付かず離れずの距離を保ち関わりを絶やさないようにして、なんとか振り向いて欲しいと願いながら志織を想い続けている間に30歳を過ぎ、俺の将来を心配した父から度々縁談を持ち掛けられるようになった。

なんとか話をはぐらかして縁談を断り続けていたものの、父が玲司の母親のゆうこさんと再婚してからは、さらに結婚を急かされるようになってしまった。

どの縁談にも首を縦に振らない俺にとうとうしびれを切らした父は、「俺の勧める相手との縁談がそんなに気に入らないのなら、さっさと自分で相手を見つけてこい」と言い放った。

人一倍……いや、人の数倍はせっかちな父にしては、ここまでよく我慢したものだと思う。

だから余計にそろそろ本腰を入れて将来を考えなければ、無理にでも父の選んだ相手と結婚することになってしまうだろう。

しかし俺は相変わらず女性が苦手だし、どうしても志織のことがあきらめられずにいた。

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