愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
洗濯と掃除、食料品などの買い物や食事の準備まで済ませないといけないのに、さっさとやらないと何時間かかるかわかったもんじゃない。

だけど口出しをするのも気が引けて、気にしないようにしながら勉強を続けていたけれど、いつまで経ってもリビングの掃除が終わらないので、俺はついに黙って見過ごすことができなくなってしまった。

「宮本さん、そんなに丁寧に掃除してると何時になるかわかりませんよ。毎日掃除してる場所はざっと掃除機かけて、2日に1回ほど置いてある物のホコリを取る程度で大丈夫です」

少し偉そうかなと思ったけれど、宮本さんは今日初めてこの家に来たのだから、教えてあげた方が親切というものだろう。

俺に指摘されると、宮本さんは少し恥ずかしそうに頬をかいた。

「あっ、ごめんなさい。こんなに広いおうちは初めてだからつい楽しくなっちゃって……。そうですよね、急いでやります」

「いや、急いでやってくれとまでは言ってませんけど……。でもついでに言うと、2階の一番手前と奥の部屋は掃除しなくていいです」

「わかりました」

気を悪くしたかと思ったのに、宮本さんはそんなそぶりも見せず素直に返事をして掃除を続けた。

急な代役だったようだし、宮本さんがこの家の仕事に慣れるまで、わからないことは俺が教えてあげることになりそうだ。

< 8 / 82 >

この作品をシェア

pagetop