ファーストキス泥棒
見た目だけでもかなり目立つが、大和が目立つのはもっとひどいことでだった。

入学してすぐ、大和は同級生のかわいらしい女の子と付き合った。しかし、一週間もすればもう別のかわいい女の子と付き合っている。そう、彼は女たらしで有名になったのだ。

顔は芸能界に飛び込んでいけるほど整っている。しかし、発言や行動は華が見ていて不快だった。話しかけられたことも一年生の時何度かあるが、その度に冷たくあしらっていた。

次第に大和は華に話しかけなくなり、関わることはなくなった。こうして関わったのは、二年生になって初めてだった。



ドンッという音で、華は我に返った。いつのまにか回想の世界に浸っていたらしい。

辺りを見ると、男を投げ倒した場所ではない。人気がない静かな場所だ。どうやら華が呆然としている間に、大和がここに連れてきたようだ。

そして現在、華は少女漫画でよくある展開を体験している。世の女の子なら誰もが顔を赤くさせるであろう、壁ドンだ。

「なあ……」

大和が華の耳元でささやく。ここのやり方でこの男はどれほどの女子を落とし、泣かせてきたのだろう。華は怒りを覚えた。
< 6 / 16 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop