ファーストキス泥棒
華のファーストキスは、大嫌いな男子に奪われてしまった。



あの事件から早一ヶ月。華と大和は後期生徒会に立候補し、それぞれ仕事を手にした。

「これからよろしくな」

ニッコリと微笑む大和に、「こちらこそ」と嫌そうな顔で華は言った。

夏休みが明けてから、大和は華に猛烈にアプローチをするようになった。

笑顔で挨拶をするのはもちろん、華の好きな購買のパンを買ってきたり、華が先生に頼まれた仕事を勝手に手伝ったりする。その度に華は冷たくするが、大和は気にしていないようだった。むしろ、手応えのある最高のゲームだと言いたげな表情を見せた。

「どんなに頑張っても無駄よ」

華がそう言っても、大和は優しく微笑む。

放課後の生徒会室。華が資料の整理をしていると、大和が入って来ていつものように勝手に手伝い始める。

もうすぐこの学校では文化祭がある。今以上に忙しくなるだろう。華は資料を並べらがら思った。

「華」

突然、大和が華の髪に触れた。ショートカットの髪に大和の指先が触れる。

「何するの!」

華は大和の手を払いのけた。
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