ファーストキス泥棒
大和は意地悪そうな笑みを浮かべ、華に近寄る。

「髪にゴミがついてただけだよ。華、顔赤いけど大丈夫?ひょっとして俺に惚れた?」

大和に顔を近づけられると、キスをされた時のことを華は思い出してしまう。華は大和に拳を食らわせようとするが、その腕はいつも捕らわれる。

「……また、キスしてみる?」

そう意地悪く言う大和に、華も多くの女子が騙されるのもわかる気がした。しかし男嫌いがすぐに行動を起こさせる。

「ふざけたことばっか言ってんじゃねぇよ!」

掴まれた腕を振りほどき、華は大和を投げ倒す。そして逃げるように生徒会を飛び出した。



文化祭の準備が始まると、生徒会室に飛び込んでくるトラブルの数が異常なくらいに増えた。

「またあの人たちが!?」

トラブルを報告しに来た一年生の話を聞いて、華を始め生徒会のメンバーは頭を抱えた。

「俺たちのクラスは、劇をするつもりなんです…。でもいつも三年生の人たちが舞台を占拠していて……」

この苦情は練習がある日に必ず来るものだ。

「どんなに使わしてくださいと言っても聞いてくれないんです」

困った顔をする一年生に、華は安心させるように笑顔を見せた。
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