恋のキューピード



「俺、昨日、言ってませんが。
青井さん、手伝える事がありましたら言って下さい。
俺・・・ます」



最後が聞こえなかったが波城君は、人懐こい笑みを浮かべて部所を後にした。


莉緒は、パソコンに向かってカチカチっと打ち込んで、仕事を終わらした。


「あ、疲れた」


軽く呟いて、重たいお尻を上げて、腕時計を見たら残業、4時間してたらしい。

トートバッグを取り出してエレベータに乗り込んだ。

夢と同じなら波城君が夜空の中で待ってるかも。



あり得ない。


あれは、夢だし人懐こい波城君が待ってる筈がない。

そう、そうに決まってる。


エレベータが開いて、闇の奥に迷い込んだような真っ暗なのに人の形をした影が見えた。



うわぁぁ、何よ。



凝らすように見つめた。


え、あり得ない。

見間違えに決まってる。




< 16 / 27 >

この作品をシェア

pagetop