恋のキューピード
「俺、昨日、言ってませんが。
青井さん、手伝える事がありましたら言って下さい。
俺・・・ます」
最後が聞こえなかったが波城君は、人懐こい笑みを浮かべて部所を後にした。
莉緒は、パソコンに向かってカチカチっと打ち込んで、仕事を終わらした。
「あ、疲れた」
軽く呟いて、重たいお尻を上げて、腕時計を見たら残業、4時間してたらしい。
トートバッグを取り出してエレベータに乗り込んだ。
夢と同じなら波城君が夜空の中で待ってるかも。
あり得ない。
あれは、夢だし人懐こい波城君が待ってる筈がない。
そう、そうに決まってる。
エレベータが開いて、闇の奥に迷い込んだような真っ暗なのに人の形をした影が見えた。
うわぁぁ、何よ。
凝らすように見つめた。
え、あり得ない。
見間違えに決まってる。