菊池くん観察日誌

「何故、どこで、そんなことを?」

「いつも見てるから」

「誰が」

「菊池くんが」

「誰を」

「白石さんを」

「……見てませんが」

「気付いてないんだ」

責めるような言い草に、菊池は怪訝そうな顔をする。

「本人も気付いていないようなことに、あなたが気付くんですか」

「わ、私じゃない!」

「じゃあ誰がそんなことを」

「誰でもいいでしょ!」

焦ったような様子の佐々木。
菊池は責めるような目をする。

「それで、どうなの? 好きなの?」

「いいえ」

「……はっきり言うね」

「白石さんに特別感情を抱いたことはありませんので」

「それはそれで失礼だよ」

「……どう答えろと」

「じゃあ、なんでいつも見てるの?」

「見て」

「る」


「……」

「……」

菊池は考えるように視線を巡らし、そして小さく「あっ」と呟く。
佐々木は前のめりになって菊池を見つめる。

菊池は目を合わせない。

「……目立つから、じゃないですか」
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