というわけで、結婚してください!
「面識もなかったのに無理があるだろうが。

 なんで急にそんなことを言い出した?
 俺の未来を悲観してか?

 大丈夫だ。
 最初からそんなこと覚悟の上だ。

 それとも、そろそろなにか理由をつけて帰りたくなったのか」
と言われ、帰りたいのかどうか、冷静に考えてみた。

 帰ったら、離縁されるか。

 独房に放り込まれるか。

 妄想の中では、征が刑務官の制服を着て、牢屋に居る鈴の前を行ったり来たりしていた。

 ……絶対、脱獄できそうにないな。

 いっそ、このまま、逃亡を続けたい、ともっとも駄目な選択だとわかっていて、思ってしまった。

「何処か遠くに行きたいです」

 思わず、そうもらすと、
「じゃあ、とりあえず、本州の端まで行ってみるか」
と尊は言い出した。
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