というわけで、結婚してください!
 長い塀が続く。

 清白の大邸宅はこの向こうにある。

 鈴の家は、家に使用人を入れたくない母親が、
「誰が掃除するのよ。
 大きな家は嫌よ」
と言ったせいで、夢見ていた洋風の屋敷も、此処まで大きくはないのだが。

 さすが、執事長まで居るという清白の屋敷は西洋の美術館かという雰囲気だ。

 車が近づくと門が開く。

 車を清白家のフィアット500に乗り換えていたせいなのか。

 もう動向が知れていて、来るのを待っていたのかは知らないが。

 電動でゆっくりと開いた鉄の柵を通り抜けたあと、振り返りながら、鈴は言った。

「なんか地獄の釜のフタが開いたみたいですね」

 あ、しまった。

 尊さんの生家だっけ、此処。

 地獄の釜とか言っちゃったよ、と思ったのだが、前を見て運転している尊は、鈴以上に渋い顔をしていた。





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