というわけで、結婚してください!
「見合いのとき、夢にまで見たお前が目の前に居ることに、緊張して途中で逃げ出した」

 ああ、そういえば、見合いのときも、急な仕事が入ったと、早めに切り上げられたんだっけな、と鈴は思い出す。

「そんな無様な姿をさらしたりしないよう、式までお前には会わないようにしてた。

 どうせ、結婚するんだから、それでいいと――」

 確かに。

 あのとき、尊に連れ出されなければ、あのまま結婚し、結婚生活もなんとなく続いていたんだろうと思う。

 征さん、なんだかんだでやさしい感じがするしな。

 ちょっと、わけわかんないとこあるけど……。

 まあ、そこは尊さんと同じだし。

 でも――

 と鈴は思い出す。

 ステンドグラスから差し込む光にきらめく教会。

 夢のようなドレス。

 そして、びっくりするようなイケメンの旦那様――。

 なのに、あのときの私は、晴れない気持ちで、祭壇の前に立っていた。
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