というわけで、結婚してください!
 


 車をとめて戻ってきた尊は、屋敷の中が、しんとしているのに気づく。

 おかしい。

 鈴たちは何処だ。

 たいして時間は経っていないはずだが……。

「鈴ー」

 鈴を呼んでみるが、玄関ホールには、自分の声が反響するばかりで返事はない。

「……征ー」

 ちょっと呼びたくなかったが、征の名も呼んでみた。

 昔々、呑気にふたりでかくれんぼをしていた頃を思い出しながら。
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