というわけで、結婚してください!
 そのとき、
「鈴っ!」
という声とともに、扉の開く音がした。

 尊さんっ、と思った次の瞬間、気づく。

 しまった。

 自分で助かってしまったっ!

 せっかく尊さんが来てくださったのにっ。

 っていうか、ちょっと助けて欲しかったのにっ!

 そのとき、激しく動かしてしまったせいなのか。

 手首の縄までほどけてしまった。

「鈴っ!」
と駆け込んできた尊が鈴を見て言う。

「鈴……。
 なにをしている?」

「せ、せっかく、助けに来てくださったので縛られてみようかと――」

 鈴は自分で自分の手首に縄をかけようとしていた。
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