というわけで、結婚してください!
「っていうか、貴方は三日仕事しないと死にますよ」
と数志は征に忠告めいたことを言っている。

 うーん。
 こう見えて、実は、心配しているのだろうか。

 まあ、この人が一番征さんのことを考えているのかもしれないな、と思ったとき、カカカカッとコンクリートの階段を駆け下りてくる音がした。

「うるさいわねっ、あんたたちっ」
と叫んだのは、紺のドレスを着た、びっくりするほど美しい女だった。

 だが、この顔はさっき見た、と鈴は思った。

 女は、泉美と同じドレス、同じ背格好、同じ顔をしていたが、なにかが違う。

 そういえば、ドレスも同じに見えて、少し色と素材が違うような、と思ったとき、

「お袋」
と尊が、

「和音《かずね》様」
と数志が彼女を見て言った。

 うっ、これが尊さんのお義母様。

 泉美さんより、更に凶悪……

 失礼。

 強烈な印象を与える人だ、と鈴が思った瞬間、和音が怒鳴りだした。
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