というわけで、結婚してください!
「お姉ちゃんっ!
私の指輪、持ち出したわねっ。
あれは、私がお祖母様にいただいたものよっ」
「だったらなによっ。
あんた、昨日、私のバッグをっ――」
と駆け上がっていった和音は、姉妹で揉めながら、何処かに行ってしまったようだ。
声が遠ざかっていく。
「なんかあのー。
……すごい人ですね」
まだ征の膝に座らされたまま、鈴は呟く。
あの親から、よくこんな、ちょっとぼんやりした尊が生まれたな、と思ったのだ。
親がシャカシャカしすぎていると、子どもは、ぼうっとするって言うから、それでかな。
などと、強烈すぎる和音に毒気を抜かれたまま、階段の方を見ていると、尊の父、正明が下りてきた。
まだ微かに聞こえてくる、妻たちの騒ぎ声を背中に浴びながら、ひとつ溜息をついた正明は、
「ほら、鍵」
と尊に鍵を渡す。
あっ、という顔を征がした。
私の指輪、持ち出したわねっ。
あれは、私がお祖母様にいただいたものよっ」
「だったらなによっ。
あんた、昨日、私のバッグをっ――」
と駆け上がっていった和音は、姉妹で揉めながら、何処かに行ってしまったようだ。
声が遠ざかっていく。
「なんかあのー。
……すごい人ですね」
まだ征の膝に座らされたまま、鈴は呟く。
あの親から、よくこんな、ちょっとぼんやりした尊が生まれたな、と思ったのだ。
親がシャカシャカしすぎていると、子どもは、ぼうっとするって言うから、それでかな。
などと、強烈すぎる和音に毒気を抜かれたまま、階段の方を見ていると、尊の父、正明が下りてきた。
まだ微かに聞こえてくる、妻たちの騒ぎ声を背中に浴びながら、ひとつ溜息をついた正明は、
「ほら、鍵」
と尊に鍵を渡す。
あっ、という顔を征がした。