というわけで、結婚してください!
 この人もなかなか鈍感だな、と思っていると、なんだかわからないが機嫌が直ったらしい和音たちが仲良く階段を下りてきて、

「あら、まだやってたの」

「なにやってるの」
とそっくり同じ顔、同じ声で言ってきた。

「征、もう諦めなさい。
 一度、尊の手垢がついたような女」

 うーん。
 これはどっちだったっけ?

 だんだんわからなくなってきたが、どちらにしても、ひどい言いようだ、と思っていると、もう片方も、

「そうよ。

 初めてあんたが本気で欲しがったものだから、与えてあげたかったけど。

 人の気持ちばかりはどうにもならないものなのよ」
と語ってくる。

 いや、だから、どっちが言ってるんですか……、と思いながらも、鈴は、ちょっと感謝もしていた。

 言葉は悪いのだが、どうも、征に自分を諦めさせようとしてくれているようだった。
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