というわけで、結婚してください!
 いや、恥ずかしいではないですか……と鈴は思っていたのだが。

 尊が目で脅してくるので、仕方なく、鈴は額に手をやり、言った。

「ほ、本当です。
 尊さんは、ちゃんと、おでこになさいました……」

 すると、
「なんだって!?」
と征が騒ぎ出す。

「夫の俺が縛っただけで、まだなにもしてないのにっ?」

 腕を組み、無言で、そのやりとりを眺めている窪田に数志が訊いていた。

「なに考えてるんです?」

「いや、今、鈴様にキスしたらどうなるんだろうなと思って」

「俺もです」
と二人で笑い出す。

 最悪な人たちが此処に居ますよ……と鈴が思っていると、ふいに時計を見た数志が真面目な顔になり、言ってきた。

「まあ、その辺のところは、どうでもいいんですけど。

 尊様、もう赴任先にお戻りにならないと。

 明日には、職場に、ご挨拶に行っていただかないといけませんからね」

 ……そうだった、と鈴が思ったとき、尊がこちらを見た。
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