というわけで、結婚してください!
 


「着いたぞ、鈴っ。
 九州だ!」

 夜明けの関門橋を渡りながら、尊が叫ぶ。

「ついに来ましたねっ」
と結構な勢いで昇ってくる朝日に照らされた海と白い橋を見ながら、鈴も歓喜した。

 数志が居たら、
「いや……、昨日も来ましたよね?」
と冷静に突っ込んでくるところだろうが。

 橋を渡り終え、しばらく走る。

 やがて見えてきた九州だろうが、本州だろうが変わらない街並みに、鈴は、

「……やっぱりなにもありませんね」
と言って笑った。

 いや、なにもないわけではないのだが。

 此処が天竺なわけでもなく。

 取ってくるだけで、自分たちの罪が許されたり、明るい未来が拓《ひら》けてくるような経典があるわけでもない。

「そうだな……」
と尊も頷いたが、笑っていた。
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